「今」という瞬間は刻刻と通り過ぎ、更新されて「新しき過去」となる。その「新しき過去」に、永遠のかがやきを発見するべく、感受性や認識をいつも柔軟に保っていたい。そうした著者の願望が歌集名となった。
(収録歌より)
葉の間にいちやうの緑き実の見えて新しき過去かがやくごとし
紅葉がアルファベットのやうに散る道を歩みぬ黙してふたり
苦しいと言はず必死に呼吸して必死の尽きしとき母逝けり
四つ星の囲むちひさな菱形が蟹座にありて春の入り口
はとバスの黄色い車体を街に見ずただ新緑のさやぐ東京
どこまでがフェイクニュースか判り得ず犬の鼻、鳥の目もたぬわれには
目次
月夜の魚
焼鳥を買ふ少年( 都内足立区を詠む)
ご贔屓さま
前髪
むかしがたり
小舟のごとし
移動図書館
大正の闇
新しき過去
晩秋の旅
画鋲のひかり
チキンラーメン
鈴振るやうに
京マチ子の墓
昨日の雨
薄荷糖
やさしき距離
寒咲き
春の入り口
ダイヤモンド・プリンセス号
黄色い車体
会はねど足るる
深海の色
麦星
旅打ち
ピルエット
一等星
言葉の渦
曖昧な縮尺
赤きその蓋
世界中の青空
金色の糸
バレエ『白鳥の湖』
きらめく舌
道はすべて
ムリーヤ
あとがき
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