日本列島は4つのプレートがせめぎあっている世界でも稀有な場所に位置しており、このため地震や火山噴火が多く、また国土の大半が山岳地帯のため、地すべり・崩壊といった自然災害も多くなっています。これらの自然災害から社会を守ることは近年の重要なテーマとなっています。また、道路・鉄道などの交通、電気などのエネルギーの供給、飲料水の供給、これらの社会生活を支えているのが、ダム・トンネルなどの建設物です。これらの建設物は、社会資本もしくはインフラストラクチャーと呼ばれています。インフラストラクチャーとは、直訳すれば「下部構造」で、社会を縁の下から支える構造という意味です。また、これらのインフラストラクチャーは地盤・岩盤に支えられています。この地盤・岩盤の良否について調査(診断)し、問題がある場合に対策を立案(処方)する、医学のような学問が地質工学です。地質工学の技術者は、いわば地盤・岩盤の医師「ジオドクター」といえるでしょう。本書の副題は、地質工学の目的が、地盤・岩盤の問題点を解決するための「ジオドクターによる処方箋」であるとの想いから付けられています。筆者は、1999年より早稲田大学理学科地球科学専修において非常勤講師として、「応用地質学」、「地質工学」の講義を担当し、学生諸君の指導に当たってきました。本書の内容は、この早稲田大学での講義に基づいた地質工学に関する基礎的内容と、業務経験に基づいた地質工学の応用的内容とで構成されています。読者対象としては、大学3・4年生、大学院生、さらに建設事業に係わる若手〜中堅の地質技術者ならびに土木技術者を想定しています。本書では、地質工学の基礎知識に、ダム、トンネル、地すべり・崩壊に関する地質工学の専門知識ならびに実務的な事例、地震災害、環境地質、労働安全衛生、地質リスクマネジメントについての内容が盛り込まれています。本書は、地質工学に関連する業務の実例を盛り込み、現場での岩盤の見方や考え方について解説した地質工学に関する実践的な内容になっています。
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