【POD】あなたの会社の産業医はメンタルを扱えますか?
働く人のメンタルの問題では、臨床で7割を治せても、残り3割を産業医が担う必要があると著者は訴える。とくに復職に際して、産業医には環境調整を行い、面談では精神療法を行う重要な役割があり、それらは診断に基づくため、診断も治療も行う能力が必要である。これが広く認識され、復職成功率を改善していく必要性を訴えている。関係者だけではなく、広く一般の人たちに向けて書かれている。精神疾患とその対応について、社会復帰・復職の観点から知ることができる。著者の願いは、メンタルに関する産業保健が改善され、遷延化や自死などが少しでも減ることである。理解を助けるため多数の図表を用い、一言での要約や構成上の工夫をしている。一般的に医者の世界では産業医は楽な仕事と考えられていて、病院の常勤医を定年退職してから勤めるのに産業医は最適な仕事の1つとされている。主要な仕事は社員の健康に関わる面談であり、なかでもメンタルに関して休職、復職の判断、復職後のフォロー、ストレスチェックによる高ストレス者の面談が重要な業務である。産業医は診断も治療も行わないことになっていて、面談も形式的にやればとても楽な仕事と言える。しかし、これでは産業医の存在意義がなく、メンタルの治療の仕上げが欠落することになる。メンタルは7割までは臨床で改善され、日常生活に支障はなくなるが、働く者にとっては、復職が課題である。残り3割の治療が残っているのであり、職場の環境調整が必須である。それを主治医が行うのは困難であって、行えるのは産業医しかいない。職場復帰のための診断書は形式的なものであり、産業医が復職のための環境調整や本人への指導を主導すべきである。したがって、産業医には精神科的な診断と治療を行う能力が求められる。面談は精神療法である。うつ病、双極性障害、現代的うつ病様状態、適応障害、発達障害などについて、その理解と対応のための解説が述べられている。とくに、いわゆる新型うつ病という言葉を否定し、現代的うつ病様状態として考え方を整理した。双極2型の混合状態に焦点をあて、対処の方法をまとめている。適応障害についての正しい認識を述べている。復職成功率は50%に満たないと言われていて、その改善のための方策を述べている。環境調整がきわめて重要であり、その鍵は上司にあり、産業医が主導して現状を改善すべきであることを述べている。最後に補遺として、関係者が抱く疑問に答える形で、どうして復職まで時間がかかるのか、診断書のウソとは何か、主観的なストレスとは何かについて、長い研究や経験を踏まえ、仮説を使いながら説明している。
レビュー(0件)