祈りの心は果てしなく言葉から遠ざかってゆくのだろうか。--「現代社会の言葉が、自分の知っている言葉とはちがう」という不安と、「それでも」という決意に揺れながら。二〇二〇年の終わりから二〇二四年の初めまでの四六八首を収めた第十六歌集。
【歌集より】
猛暑日は浮き世ばなれをしてゐたい豆腐のいろのワンピース着て
止まりてはまた止まりては窓をゆくもうAIかもしれない蜘蛛が
反戦ははるかなる虹見えながら指さしながらだれも触れず
ベビーカーはさくらの下に いくたびも生まれかはりてみどりごねむる
古猫のひとり遊びのあさあけのこんなやさしい日をありがたう
アプリと穴
フロックコート
豆乳鍋
はんかち落とし
合鍵
ニボラー
スプーンにすくふスープ
月組さんの動画
象の移動
オンライン会議
化学式
きつねうどん
真冬のシンフォニー
雨
虎
よみがへり日和
蜆
どんな声で
ベビーカーはさくらの下に
はるかなる虹
真夏のひかり
無想界
死後はじめての
二枚の地図
なにも還らず
夜空
焼肉
わからなくなる
心臓
猿ヶ京
井の頭線
濡れようか泳がうか
いま風の向きが変はつて
酢の殺しかた
星空のワンピース
死のほかに
こころしらたま
奇天烈の神がみ
だれかの子
概算
クリスマスのくじ引き
あとがき
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