どこかできいた声、だ。暗がりに沈んでいる、顔。販売機の灯りがぼうっと照らす、赤茶けた髪。とうもろこしは、髪をさわっと揺らし、かかとをふみつぶしたスニーカーをひっかけるような感じで、音もたてずに歩き出した。また、「行ってしまう」のだ。ひとは、いつだって、行ってしまう。だいたいは、行ってしまっても惜しくないひとばかりだけど、時々、ごくまれに、「いてほしい」ひとがいる……。不毛の恋に疲弊している39歳の葉子は、不思議な出逢いをする。それは時折からだが透けて見える、インディーズバンドの男の子だった…。作家・牧野節子の原点である恋愛小説。宮尾登美子氏絶賛、渡辺淳一氏称賛の「女流新人賞」受賞作。
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