怪異研究の権威、西山克氏が「怪異は情報にすぎない。」と書いてから20年が過ぎた。その間、多くの怪異「情報」研究が生み出されたが、果たしてそれらは怪異が「情報」であるということにどこまで自覚的であったのか? 本書は、髪切り・一目連・石塔磨き・雀合戦・流行正月などの記録を新たに博捜し紹介・解読しながら、主に近現代の歴史社会学の分野で隆盛のメディア史的手法を用いて、近世怪異の新たな相貌を描く野心的研究。
■序章 メディア論としての「怪異」研究
はじめに/情報としての怪異/怪異と不思議/「妖怪」と怪異/怪異解釈とデータベースの所在/家職と中世の怪異/分散型ネットワークの構築と近世/メディアから見た怪異の地平/本書の概要
■第一章 「髪切り」-近世メディアがつくる怪異
はじめに
一 一七世紀の髪切りー寛永〜元禄
二 明和年間の髪切りー江戸・大坂
三 考証の時代ー一九世紀の髪切り事件
四 「髪切り」のメディア論
おわりに
■第二章 「一目連」-情報の連鎖と拡大
はじめに
一 百科事典(レファレンスブック)の一目連
二 一目連の「正体」をめぐる言説ー多度神社周辺の情報発信
三 発散する一目連像と二次創作の混沌
おわりに
■第三章 「石塔磨き」の怪ー近世都市の怪異とメディア
はじめに
一 石塔磨き騒動の発端と拡大ー文政一三年九月
二 歪曲・膨張と収束ー文政一三年一〇月〜一一月
三 メディア流言としての石塔磨き
おわりに
■第四章 「雀合戦」-書状というメディア
はじめに
一 遠州見附
二 江戸湯島ー天保三年
三 情報の収集と分析ー馬琴と松浦静山
四 雀合戦を伝えるメディア
おわりに
■第五章 「流行正月」-疫病の噂とコミュニケーション
はじめに
一 宝暦九年の流行正月
二 流行正月をめぐる噂
三 禁裏をまきこんだ流行正月ー安永七年
四 猿の予言ー文化一一年
おわりに
■終章 メディアと怪異からみる近世社会
近世メディアのなかの怪異/予兆としての怪異/怪異の私事化/怪異のリアリティ/情報のゲートキーパー/近世の情報とネットワーク/情報を媒介するメディア/一九世紀の情報流通と社会/見ることの快楽/怪異とエンターテインメント/その後の怪異とメディア/近代化のなかの怪異
あとがき
初出一覧/図版出典一覧
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