【多数の実写映像(リアル)と創作(ヴァーチャル)が織りなす竹藪幻想譚。はて、面妖な。】 淀川の対岸に、大山崎の天王山を望む洛南の景勝地、京都府八幡市橋本。かつては男山の石清水八幡宮の参詣道の町として、また京街道沿いの古くからの色町として栄えた橋本遊廓があった。 近年まで、近世からの遊里の佇まいを色濃く残しながら、近代西洋建築様式の娼館も建ちならぶ「紅灯の巷」をほうふつさせてくれていた。…… 朽ち腐った格子窓やの紅殻格子の塗壁の廓の家並、かとおもえば華やかな彩りのステンドガラスの飾窓が異国情緒を誘う西洋館を模した鉄筋の建物……が、そうした風情のある町並も、今日では多くが廃屋化して取り壊されたり、新しく建てかえられたりして、つぎつぎと櫛の歯が抜けるがごとく失われてしまった。 本書は、そうした貴重な文化財といっても過言ではない、古い廓の家並と町の佇まいを克明に活写した写真集と、発明王エジソンが電球のフィラメントに使った竹の名産地としても知られる男山周辺を舞台にした、一種幻想の味わいのある小説集によって成りたつ。さらに淀川下流域の、著者の根源(ルーツ)ともいえる、大阪の町工場とどぶ川のある原風景をえがいて『早稲田文学』掲載の猟奇譚「櫛」他の短編をくわえている。 本書の書名にもなった『竹栖譚(ちくせいたん)』は、安岡章太郎氏、坂上弘氏、田久保英夫氏ら審査員からの好評をえて「三田文学賞」佳作入選した私小説である。
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