平安末期に成立した説話集『今昔物語集』と、その根幹的な原拠という11世紀の源隆国「宇治大納言物語」。
10世紀後半のチョウ然の渡宋・帰国と一切経の請来のインパクトを承けて進展した対外交流や書物の輸出入、仏教的世界観の中での和国意識の高まりという対外観に注目しつつ、古代説話集の成立から『今昔物語集』の生成へという文学史、仏教文化史の潮流を論じる。
仏教世界の起源である仏伝の中に、日本だけにしか存在しない仏の遺言を語り伝え、和語で描こうとすること、また阿倍仲麻呂帰国説の生成などー、あまたの画期的な物語行為はいかにしてなされたのか。
はじめにー対象としての説話集史素描
序 論 仏教文学としての説話集と対外観
第一部 古代説話集の成立と対外観
第一章 仏教類書の影響と説話集の存立ー「諸教要集」をめぐって
第二章 『三宝絵』の捨身と孝ー尊子内親王をめぐる
第三章 投企される〈和国〉性
第二部 源隆国と「宇治大納言物語」-説話集と作者の環境
第一章 源隆国の才と説話集作者の資質ー研究史再考から「宇治大納言物語」へ
第二章 源隆国晩年の対外観と仏教ー宇治一切経蔵というトポスをめぐって
補 論 藤原忠実の「家」と「父」そして「子」-言談・説話の中の院政期
第三部 『今昔物語集』の成立と宋代
第一章 『今昔物語集』成立論の環境ー仏陀耶舎と慧遠の邂逅をめぐって
第二章 『今昔物語集』の成立と宋代ー成尋移入書籍と『大宋僧史略』などをめぐって
第三章 かへりきにける阿部仲麻呂
第四章 『今昔物語集』の宋代観と和歌逸話の形成
補 論 編纂動機と逸話配列ー紀貫之の亡児哀傷と『国文学史講話』をめぐって
終章 世界叙述と説話文学史ー矜恃する和語
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