蟻の棲家を読み面白かったので、こちらの作品も読んでみました。人を殺めた人を殺人者と言うけれども、その背後にあるものは様々なんだと、当然ながら感じた作品です。,木部美智子シリーズは数ある女性記者モノのなかでも群を抜いていると思います。 この「殺人者」も、ハッキリ言ってしまえば「おいおいそりゃないだろうよ…」とか「ええ…この人ってこんな目に遭うほどか?」等フィクションならではのあれやこれやはあるのですが、そんなことが気にならないほど全体のトーンがまとまっています。個人的には、復讐とほぼ無関係の人物をも駒にする本作の犯人には同情も共感もできないかわりに、怒りも湧きません。哀しみは誘うけれど…それはやはり著者が「人物」というものを大層魅力的に、あたかも呼吸をしているかのように描き出している筆力にあると思います。犯人には犯人の確固たる意思とそれを支える理由がある。著者の代表作とも言える「蟻の棲み家」でも感じたことですが、美智子はあくまでも記者であり警察ではない、というその一線を守ることで現実味が増しますし、ありがちな勧善懲悪とは一線を画していると感じます。何度も読み返しています。
レビュー(44件)
殺人者
蟻の棲家を読み面白かったので、こちらの作品も読んでみました。人を殺めた人を殺人者と言うけれども、その背後にあるものは様々なんだと、当然ながら感じた作品です。
秀作、素晴らしい
木部美智子シリーズは数ある女性記者モノのなかでも群を抜いていると思います。 この「殺人者」も、ハッキリ言ってしまえば「おいおいそりゃないだろうよ…」とか「ええ…この人ってこんな目に遭うほどか?」等フィクションならではのあれやこれやはあるのですが、そんなことが気にならないほど全体のトーンがまとまっています。個人的には、復讐とほぼ無関係の人物をも駒にする本作の犯人には同情も共感もできないかわりに、怒りも湧きません。哀しみは誘うけれど…それはやはり著者が「人物」というものを大層魅力的に、あたかも呼吸をしているかのように描き出している筆力にあると思います。犯人には犯人の確固たる意思とそれを支える理由がある。著者の代表作とも言える「蟻の棲み家」でも感じたことですが、美智子はあくまでも記者であり警察ではない、というその一線を守ることで現実味が増しますし、ありがちな勧善懲悪とは一線を画していると感じます。何度も読み返しています。