常世の国、ワタツミの宮、龍宮などの異境、その水の異界から訪れる童子と美麗な女あるいは嫗、ワニ、龍、雷、これらに対する古代・中世の人々の畏れ、敬い、頼り、忌み憚り、嫌い、卑しみ、懐かしみ、憧れる心のはたらきを読み解き、それが表現を得る機制を解き明かす。過去の文芸を享受することによって新たな創作活動が営まれ、あるいは創造的表現行為を通じて蘇生し継承される始原の心性、そのような相互作用を文学研究の枢要な課題として論述する。
前書きーー本書の主旨
第一章 龍蛇と菩薩ーー救済と守護ーー
一 はじめに
二 龍蛇とは何か
三 三毒の象徴としての龍蛇
四 水辺の龍蛇の死骸の上に建つ寺院
五 霊池に顕現する龍蛇=菩薩
第二章 東アジアの龍蛇伝承
一 はじめに
二 鷲鷹と龍蛇との闘争
三 龍宮の宝蔵
四 龍鳴の感応
五 龍蛇の聴聞
六 むすび
第三章 龍蛇と仏法
1 水の童子ーー道場法師とその末裔ーー
一 はじめに/二 雷の子=分身の誕生/三 童子としての雷神/四 童子・剣・蛇体・雷 五 忌避される童子たち
2 能「道成寺」遡源
一 はじめに/二 道成寺説話の展開/三 鐘巻の芸能/四 鐘入の原型/五 両義的な龍蛇
第四章 龍宮伝承
1 東アジアの龍宮訪問譚
一 はじめに/二 俵藤太伝承とその先蹤/三 龍蛇報恩と始祖伝承/四 東アジアの基盤的伝承/五 付・ワタツミとワニをめぐる古代的映像
2 龍宮乙姫考ーー御伽草子『浦島』とその基盤ーー
一 はじめに/二 娑竭羅龍王の乙姫/三 厳島の姫神/四 八幡の姉妹神/五 放生報恩と空船/六 乙姫の原像/七 原像と変容
第五章 龍蛇と観音
1 観音像の背後に立つもの
一 はじめに/二 観音の応化/三 先住の神々と観音菩薩/四 亡親としての観音
2 龍蛇・観音・母性ーー説話の変奏と創作ーー
一 はじめに/二 観音霊場と水/三 龍に乗る菩薩/四 実母の亡魂/五 みごもる蛇
第六章 檜垣の嫗の歌と物語ーー伝承の水脈ーー
一 はじめに
二 能「檜垣」の嫗の原像
三 「みづはくむ」遡源
四 檜垣の嫗の詠歌の本意
第七章 講義「水の文学誌」--実践の記録ーー
一 はじめにーー問題の所在
二 授業中の小レポート
三 「水の文学誌」における道成寺物語
四 小レポートの紹介配布と追加の教材
五 残された課題
後書き
初出に関する覚書
索引
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