支援の現場で出合う暴力は,本質的には防止や制圧をするものではなく,クライエント自身が主体的選択として「手放す」ものである。しかし,クライエントは欲求や感情を言葉ではなく暴力という対処行動として表出し,そのことに苦しむ場合でも自ら援助を求めることはほとんどない。なぜなら,援助を求めるとは欲求や感情を言葉で表出することそのものだからである。その結果,暴力を振るうクライエントへの支援は困難を極めることになる。
本書では,暴力の定義,起源,要因を解説し,医療・司法・福祉各領域におけるDVや児童虐待への支援実践を概観しながら,思春期以降の児童から成人までを対象とした暴力を手放すための四つのフェーズからなる支援モデルとセラピストの適切な「ありよう」を提示する。
また,児童による性暴力と施設における暴力についての支援モデルを適用した二つの事例と,最終章で著者が提言する「情理の臨床」を通して,暴力を手放す臨床心理学的支援に迫る。
序文|田嶌誠一
はじめに
第1章 手放す支援の難しさ
第2章 暴力の起源を辿る
第3章 暴力が生じる要因とその影響
第4章 各領域の支援を概観するー医療,司法,福祉を中心に
第5章 DVと児童虐待の支援を概観する
第6章 手放す支援のモデル
第7章 セラピストのありよう
第8章 事例を通じて理解を深める(1)-性暴力の事例
第9章 事例を通じて理解を深める(2)-施設における暴力
最終章 「情理の臨床」としての手放す支援
あとがき
略歴
佐々木大樹(ささき・だいき)
人間科学(学士),心理学(修士),教育学(博士)と異なる領域で学位を修める。日本心理臨床学会学術誌編集委員(第 7 期)。神田橋條治医師に師事し,10 年にわたり陪席。公認心理師,臨床心理士,臨床発達心理士スーパーバイザーの他,産業カウンセラーの資格を持ち,大手企業でのキャリアカウンセリング経験もある。児童相談所でも心理職を15年,福祉職を2年務め,専門職向けの実践的研修を多数担う。現在,東海学園大学心理学部准教授。
「脱構築」をテーマに,対極的なフィールドを横断できるキャリアを実験的に歩み続けている。博士論文も児童福祉司として勤務しながら執筆。実験的キャリアを通じて「どの現場の支援・経験も,その現場にとってだけではなく,学術的な意味においても価値がある」と感じている。
著書:『初期非行の指導』(愛知教育大学出版,共著),『現実に介入しつつ心に関わる 展開編』(金剛出版,共著)。
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