私たちが目の前の人=患者を理解したと思ったとき,患者についての所見を書くとき,患者についての評価を述べるとき,患者に対して自分の理解を伝えるとき,そして,患者を変えてあげようと思うとき,私たちはその善意と専門性の背後に,加害性や植民地化への欲望をかかえていないだろうか。そこに差別や偏見がないだろうか。正直に述べよう──私自身はそこから逃れられたことがない。その中で私たちはどのように臨床実践に向き合い,何を考えて人と会い,そしてどんなことを考え続ける必要があるのだろうか。私は,本書がそうしたことについて,読者とともに考えるための場所になればと願っている。だから本書は,初心者向きでもあり,専門家向きでもあり,一般人向きでもあり,そして熟練者向きでもある。
序章 対人援助職の「業」と覚悟
第一部 臨床場面のリスクに向き合う
第一章 臨床家の加害性
第二章 植民地化への欲望と、植民地化への恐れ──臨床家の脆弱性の問題
第三章 関係精神分析とフェミニズムの視座
第四章 精神分析世界における排除──フェレンツィの発掘から
第二部 当事者性と間主観性
第五章 臨床場面に浮かび上がる他人
第六章 臨床場面に浮かびあがる私
第七章 臨床場面における当事者
第八章 間ー文化的変容
第三部 臨床実践と倫理
第九章 間主観的な事例の記述
第十章 書くことの問題
第十一章 日本の精神分析
第十二章 当時者性と自己愛的怒り
エピローグ──対話の作業と、間ー文化的体験
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