本書は、九世紀に成立したキエフ・ルーシの系譜を引くウクライナにおける、十七世紀から二十世紀はじめに至る思想の展開を跡づける一つの試みである。正教の神学者、連邦主義者、貴族政主義者、社会主義者、西欧主義者、民族主義者、人民主義者など取り上げた思想家は多様だが、彼らは一様にウクライナの現在と将来における体制と社会、複雑な歴史をたどってきた周囲との関係を考えている。ロシアやポーランドと離れて独立に進むのか、たがいに協調し何らかの連合を組むのか、あるいはベラルーシまで含めた東スラヴ全体の統合を目指すのか。ウクライナにおける思想史の展開をたどることは、現在のウクライナのアイデンティティと多様性を理解するためには必要不可欠の作業なのである。
レビュー(0件)