子どものころから科学が好きだった著者は、新聞社の科学記者として科学を伝える仕事をしてきた。そして二〇一五年、科学の新たな地平を切り開いてきたアメリカで、特派員として心躍る科学取材を始めた。米航空宇宙局(NASA)の宇宙開発など、科学技術の最先端に触れることはできたものの、そこで実感したのは、意外なほどに広がる「科学への不信」だった。「人は科学的に考えることがもともと苦手なのではないか」-。全米各地に取材に出かけ、人々の声に耳を傾けていくと、地球温暖化への根強い疑問や信仰に基づく進化論への反発の声があちこちで聞かれた。その背景に何があるのか。先進各国に共通する「科学と社会を巡る不協和音」という課題を描く。
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反科学の本音とは
著者は、読売新聞の米ワシントン特派員として大統領選挙や科学コミュニケーション、NASAの宇宙開発などを取材した三井誠さん。トランプ大統領当選とアメリカの科学離れを取材し、その背景を探ろうとしている。 本書は、人は科学的に考えるのがもともと苦手なのではないか。現代人には石器時代の心が宿っているのではないか、という疑問から始まる。 三井さんはトランプ政権には批判的だ。進化論や地球温暖化会議派が力を付けてきたのはトランプ大統領の影響とし、オバマ前大統領の民主党政権と比較する。 ただ、ここで紹介している進化論や地球温暖化に関わる論点が、やや「非科学的」と感じた。 たとえば進化論を否定する創造説には、少なくとも2つの論点がある――世界誕生を6千年前としていること、それと進化説の否定である。前者については、地球上に37~38億年前の生物の化石が発見されている。放射年代測定という絶対測定法だから、これを否定するのは容易ではない。 一方、後者の進化説は仮説であり、まだ進化のメカニズムは明らかになっていない。ここに他の仮説を提示する「科学的余地」はある。 地球温暖化については、世界の平均気温が上昇しているのは事実であるし、二酸化炭素濃度が上昇しているのも事実である。だがしかし、人類の活動によって二酸化炭素濃度が増えているという確証がない。そして、今回の温暖化はミランコビッチ・サイクルと関係ないという確証はあるだろうか。 ユヴァル・ノア・ハラリ氏は『サピエンス全史』において、7万年前にアフリカ大陸を再出発したホモ・サピエンスは「認知革命」を起こし、チンパンジーなどの「群れ」とは比較にならない大規模な組織を統率できるようになったと書いている。これは、『世界神話学入門』で後藤明さんが紹介する「ローラシア型神話」にも通じる部分がある。 すべての人類に石器時代の心が宿っているわけではなく、認知革命を達成する以前の種と、達成した後の種の混血しているのではないだろうか。 終盤に、科学者のコミュニケーション能力を高める必要性が説かれている。この点には同意する。 本書でも紹介のあったカール・セーガン氏が来日した際、高校生だった私はその講演を聞きにいった。あれから40年、科学技術の道を進んでくることができたのは、そうしたコミュニケーションのおかげである。今度は、私から後輩へバトンを渡さねばなるまい
アメリカに何故トランプ大統領が誕生したか、少し理解できた様に思いました。