確信成立の条件を明確化するE.フッサールの現象学の立場からすると、キツネ憑きや悪魔憑きなど、民俗社会でみられる憑依は、憑くもの(憑依者)を媒介とする、被憑依者、祈祷師、コミュニティの人たちの共同的ー間主観的信憑(共同信憑)として記述することができる。被憑依者は、自己身体の背後(後ろ)の身体空間に憑依意識性を感じながらも、ある機会に憑依者(何ものか)が外部から内部へ侵入することで、被憑依者は人格変換(継時性二重人格)を起こす。ところが、近代化・都市化の進展にともない、共同信憑としての憑依は、個人単位の信憑(個人信憑)としての“変身”に遷移してきた。憑依の本質は変身であるが、現在の“変身”は、自己に自己が憑く、他者不在のニセの憑依にすぎない。とはいえ、憑依という知恵は、ポストモダンセラピーの中で外在化の技法や外在化する会話としていわばメタ憑依として活かされている。本書は、憑依の民俗学的アプローチをとらずに、専ら、憑依の形式的構造や憑依の身体空間の構造を記述することを目的としている。
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