海外に行くときに最初に遭遇することの一つに、実際には見ることのできないものであるが、それが何であり、どのように機能するかを理解していないと、訪問者とその旅の目的に少なからぬ影響を与える可能性のあるものがある。それはいわゆる「文化」というものである。 ここ数年、日本とアラブ諸国の政治や経済、留学、観光などの諸分野の交流が徐々に深まっていくにつれて、双方の接触する機会が増えている。日本とアラブ間の地理的、文化的、経済的相互関係を考えると、このような国民レベルの相互交流は今後ますます広がり、深まっていくことだろう。ただ、確かにそうなのだが、言語と文化の壁により、互いの社会の情報を完全に理解できず受け入れられないことがある。人々はさまざまな背景の異なった文化と行動パターンに遭遇することは日常の一風景となりつつあり、異文化コミュニケーションは昔と違い、決してごく限られた人たちだけに起こる珍しい出来事ではなくなっている。日本全体のこうした社会変化に伴い、また、互いの偏見や誤解、ステレオタイプといった障壁によって対立が蔓延する国際社会を前に、こうした文脈を背景に注目を集めているのが「見えない文化、深層文化」とも訳される「Hidden Culture」というものである。 ここで言う「深層文化」とは、現代美術やアート、食べ物、オペラなどのような類のものではない。そもそも「文化」という言葉自体は中立的な用語であり、良いものでも悪いものでもないが、一方、一般的に「文化」というものには、「見える部分」と「見えない部分」の両面がある。いわゆる「表層文化」と「深層文化」の2種類があるとされている。深層文化とは、それは、人々が社会を秩序づけるために使用してきた集合的かつ歴史的思考や行動パターン、価値観、社会的取り決め、マナー、発想、および生き方等を指すものである。 本書を貫く基本テーマは、日本人とアラブ人が互いに感じる違和感に焦点を合わせながら、小さな異文化コミュニケーションによって生じるさまざまな誤解やすれ違いなどの文化摩擦を多様な角度から掘り下げ一緒に考えてもらうことにある。そして、国際化や情報化に翻弄される現代社会の中で、日本とアラブの見える文化と見えない文化や価値観を見つめながら、「相互理解」ではなく、「相互知解」を目指していく。
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