樺太(サハリン)で生まれたアイヌ、ヤヨマネクフ。開拓使たちに故郷を奪われ、集団移住を強いられたのち、天然痘やコレラの流行で妻や多くの友人たちを亡くした彼は、やがて山辺安之助と名前を変え、ふたたび樺太に戻ることを志す。
一方、ブロニスワフ・ピウスツキは、リトアニアに生まれた。ロシアの強烈な同化政策により母語であるポーランド語を話すことも許されなかった彼は、皇帝の暗殺計画に巻き込まれ、苦役囚として樺太に送られる。
日本人にされそうになったアイヌと、ロシア人にされそうになったポーランド人。
文明を押し付けられ、それによってアイデンティティを揺るがされた経験を持つ二人が、樺太で出会い、自らが守り継ぎたいものの正体に辿り着く。
樺太の厳しい風土やアイヌの風俗が鮮やかに描き出され、
国家や民族、思想を超え、人と人が共に生きる姿が示される。
金田一京助がその半生を「あいぬ物語」としてまとめた山辺安之助の生涯を軸に描かれた、
読者の心に「熱」を残さずにはおかない書き下ろし歴史大作。
レビュー(76件)
読書日記
2023年5月10日読了 大河もの長篇。そこそこ面白かった。 明治から大正にかけての樺太(サハリン)を舞台にしたもの。史実に基づいたもの。二人の主人公のエピソードが章ごとに交互に描かれてる、と言うような感じだったが、その二人の出会いが、意外と早かった。 大河ものにありがちな、登場人物全員同士に何故かつながりがある、というふうなのだった。
民族のため、アイデンティティのために奮闘する話。歴史の大きな渦の中で生き続けようとする力強さに圧倒された。