まちは常にダイナミックな動きを生ずるものである。それらの動きは時にポジティブにまた時にネガティブにまちの形態につながる。したがってまちづくりという観点ではその動態を把握し、それに対応する適応力を用意しなければならない。すなわちこれから先のまちづくりを議論するためにわれわれは何を考えどう行動すべきかについてより進化したものの見方、考え方の展開が必要となるのである。本書で特に重視したものの見方、考え方は以下のような視点である。1最近のまちづくりの課題解決の方法の1つは、社会のダイナミズムへの対応である。物理学・化学などに端を発する動的平衡は、今や生物学や人間行動学のような様々な形態に適用されておりまちづくりにおいても重要な概念である。2まちづくり形成するための社会のシステムでは、動的平衡を促すものとしてここでは市民参加型ガバナンスの構築と実践が重要である。3市民参加型ガバナンスは多様で多元的な個性を持つ人間で構成され、そこでの創発的なベクトル形成が意思決定を担う。4そのベクトルは必ずしも唯一の大きさと方向性を持つものではなく、しばしば多値性を持つ幅広な領域のもとで形成される。5まちづくりでは、このような唯一で明確な意思決定を得ることは難しい場合が多く、決め方においてはよりフレキシブルなものとなる。このことが、ミクロでは常に変化しているがマクロでは変化しない社会の様相を形づくる。6具体的な最適な決定プロセスは、多数のパレート最適解の中で納得解を見つけていくことである。7最近のcovit19への対応方法を考えると、その感染ポテンシャルと社会経済活動の切り替えのタイミングを重要である。感染ポテンシャルをゼロにできない状況では、そのポテンシャルスケールをどの程度に抑え込みながら経済活動を行っていくかという納得解が極めて重要である。これは、感染ウィルスの問題ばかりでなく、防災問題でも共有するものである。8防災問題解決はまちづくりにとって最も重要な課題の1つである。また最近類似する問題である環境問題は、まちづくり計画の一部として導入されてきているが、防災という視点もまちづくりステージにあげなければならないことである。防災計画を取り込んだ都市計画の視点が今後重要であるといえる。9すなわちこれらの課題にガバナンス方式を取り込んだ問題解決型都市計画を志向していく必要がある。10社会を構成する人間がそれぞれ限定合理性のもとでまちづくり行動の本質を的確に把握し、それを基にまちの営みを議論することで社会での動的平衡を表現するものである。11これらのまちづくり進化論によってナッジシステムや群知能にみられる自然創発的な行動を促すことで複雑に見えるが単純な世界を生み出すことが本書の目的である。
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