論文やレポートに書くべき必須の情報とは。p値だけでは見過ごされてしまう成果を、はっきりと読者に伝えるために必要なテクニック。
「科学的研究で重要なのは有意かどうかである」というこれまでの傾向に対し、統計改革と呼ばれる新たな運動が起きている。本書はこの運動に焦点を当て、今後の研究に求められるデータの示し方を丁寧に解説。医学・教育学・社会学など、心理学以外の多くの他分野にも役立つ内容で、本書を読み進めることで必ず理解が深まる、これからの研究者必携の書。
まえがき
第I部 背景と歴史
第1章 心理統計における新展開:統計改革がはじまった
1.1 Cohen(1994)
1.2 心理学における統計改革
1.3 さまざまな分野における統計改革
1.4 日本における統計改革
1.5 統計改革の現状と将来
1.6 まとめ
第2章 帰無仮説検定:その論理と問題点
2.1 「有意」の誕生
2.2 帰無仮説検定の論理
2.3 帰無仮説検定の問題点
2.4 帰無仮説検定を擁護する
2.5 まとめ
第II部 理論と実践
第3章 効果量:効果の大きさを表現する
3.1 効果量とは
3.2 d族の効果量
3.3 r族の効果量
3.4 効果量の解釈
3.5 ノンパラメトリックな効果量
3.6 元の測定単位での効果量
3.7 効果量を求める(実践編)
3.8 まとめ
第4章 信頼区間:区間推定と図の力
4.1 検定と推定
4.2 母平均の信頼区間
4.3 頻度の信頼区間
4.4 相関係数の信頼区間
4.5 回帰分析の信頼区間
4.6 効果量の信頼区間
4.7 図の力
4.8 まとめ
第5章 検定力:研究の信頼性と経済性を高めるために
5.1 検定力とは何か?
5.2 なぜ検定力を分析するか?
5.3 検定力と標本サイズ
5.4 高すぎる検定力・低すぎる検定力
5.5 適切な検定力
5.6 さまざまな検定力分析
5.7 まとめ
第6章 さらなる改革に向けて
6.1 メタ分析
6.2 ベイズ統計学によるアプローチ
6.3 prep
付録:R プログラム
第3章のRプログラム
第4章のRプログラム
第5章のRプログラム
第6章のRプログラム
あとがき
参考文献
索引
コラム
コラム1:統計的有意性と臨床的意義
コラム2:Fisher vs. Neyman & Pearson
コラム3:有意水準ではなく,正確なp値を報告しよう
コラム4:Stiglerの法則
コラム5:標準偏差と標準誤差
コラム6:白衣の天使と円グラフ
コラム7:マジカルナンバー20±10
コラム8:Fisherの抱えていた矛盾
レビュー(4件)
伝えるための心理統計
効果量について,とても詳しく書いてあり,大変役に立ちました。
これまでの心理学の情けなさ
効果量・検定力・信頼区間。きわめて重要だがなぜか知られていないこれらの解説が、文系人間にもよくわかるように書かれている(数式や論理式が出てくるのでやや難しいが)。 そしてこの内容が理解できると思うのが、これまでの心理学の知見の危うさ。取るに足らない差でも、Nが大きいと「有意」になるのに、あたかも絶対的な差のように考察を進めてきた心理学。こんなリサーチリテラシーのない知見と言説に、大した信頼はできない。 そういう意味で、本書は心理学者と、カウンセラーでなく心理士と名乗りたいすべての人に読んでもらいたい一冊といえる。 ただ解説に際し、「○○はAという意味である。よくBと受け取られるが、それは誤解である」的な説明が多いのだが、Bのほうの説明が多く、Aに関する記述が少ない印象。そのため、『結局Aとはどういう意味だったのか、?』となりがちであるところが残念。外堀を埋めて本丸を落とし忘れた、というのが近い表現か。 また、信頼区間については「重要性は浸透し、(海外)論文でも報告されるようになったが、考察に活かされる例は少ない」と述べている。だとすればユーザーである日本の研究者らには参考にすべき論文が少なく、活用の仕方がわからない状況にあるわけだから、架空の研究例を想定し、分析の仕方、結果の書き方、活かした考察の例、といったもので1章くらい作るべきだったのではないだろうか。信頼区間の章は特に「で結局どう理解しどう活用すれば??」と置いてけぼりを食らった感が否めない。 蛇足だが、最終章は唐突にRのプログラム記述に充てられているが、本書内でRに触れられることはないわけだし、豊田氏などの分かりやすい解説書があるわけなので、はっきり言って蛇足な章であろう(とは言っても、検定力や効果量に関する豊田氏らの引用が1つもないところからみて、敢えて無視していると思われるが) 以上から、隔靴掻痒の箇所が散見されるものの、このテーマに焦点を当てて書かれた意欲的な書であることは間違いなく、心理学を学ぶ者と研究する者、そして実践する者に一読を勧めたい。