英国音楽史に屹立する孤高の作曲家フレデリック・ディーリアス。
病に苦しむ作曲家に寄り添い、その最晩年の名作をともに紡ぎ出した青年音楽家が、
みずみずしい筆致で綴った回想録の傑作、待望の完訳!
音楽と人生との関係について書かれた、
もっとも美しい書物。
──林田直樹(音楽ジャーナリスト・評論家)
病に苦しむ作曲家ディーリアスを助け、その最晩年の傑作群をともに紡ぎ出した6年間。
自然に抱かれたフランスの小村での奇跡的なコラボレーションを、みずみずしい感性で綴る。
「もう二度とあのような人に出逢うことはないだろう」
青年音楽家フェンビーは、大作曲家ディーリアスが不治の病に苦しんでいることを知り、作曲の手伝いをしたいと手紙を送る。
仏グレー・シュル・ロワンへ旅立ったフェンビーが直面したのは、盲目と全身麻痺に冒された偏屈な老人との奇妙な共同生活であった──
彼はニワトコの樹の下で車椅子に座り、
私がまったく新しい開始部を書き留めるのを待ちかまえていた。(略)
「エリック、君かい?」
私が庭の小道をやってくるのを聞きつけて、彼はそう呼びかけた。
「新作の新たな開始部を書き留めてほしい。
君の五線譜を持ってきて、私の隣に座っておくれ……」
本書は、英国音楽史に独特の存在感をもって屹立する作曲家フレデリック・ディーリアス(1862-1934)の最晩年を描いた回想録。
病に苦しむ老作曲家を助け、その「白鳥の歌」ともいうべき珠玉の作品群をともに紡ぎ出した音楽家エリック・フェンビー(1906-1997)が、作曲家没後の1936年に出版した回想録Delius as I Knew Himの全訳である。
あらゆる点で正反対な二人の音楽家の想像を絶する共同生活、奇跡的なコラボレーション、創造の歓び、そして宗教的な葛藤が、清新な感性で綴られ、一篇の文学作品といっていい回想録の傑作を生み出した。
1968年にはイギリスを代表する伝記映画の巨匠ケン・ラッセル(『恋人たちの曲/悲愴』『マーラー』)が、Song of Summerと題して映像化し、BBCが放送。日本でも1970年にNHKが放送し、わが国にも多数のディーリアン(ディーリアス愛好家)を生んだ。イギリスのシンガーソングライター、ケイト・ブッシュが、ラッセル監督の映画をもとに〈ディーリアス〉(1980)を発表したことによっても知られている。
今回、英国に在住し、「ディーリアスとゴーギャン」を研究テーマとして、英国音楽の普及に尽力する若きヴァイオリニスト小町碧が全訳を敢行。
イギリス音楽を専攻する音楽学者・向井大策が監修し、イギリス音楽を愛する音楽ライター・オヤマダアツシが解説を執筆するという万全の布陣により、待望の日本語版出版が実現した。
な…
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