スイスの鬼才が放つブラックコメディ
45歳、内気な独身男アルヒロコスは、大企業の下っ端経理係。酒も煙草もやらないきまじめな彼の世界は、すべてが秩序正しく、道徳的だ。そんな彼が知人の勧めで結婚広告を出したところ、目の覚めるような美女が現れた。以来、人生は一変。慣れぬデートに出かければ、彼が崇拝する各界の名士に次々と遭遇し、面識もない彼にみななぜか親しげに挨拶を送ってくる。出社すれば、どうしたわけか異例の大昇進。元上司たちがショックで卒倒する始末。……降りかかるこの不可解な幸運の裏には一体何が?
本書には、デュレンマットが本来書きたかった結末と、一般読者向けのわかりやすい結末が用意されている。大胆なひねり、人生への深い洞察力には、英語版出版時にあの稀代のストーリーテラー、カート・ヴォネガットも「巧妙で風変わりなスイス時計のよう」と賛辞を寄せている。
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