登場人物たちは地球で疫病や津波を経験している。下巻では、宇宙旅行の果てに、主人公たちの脳裏にある地球での悲惨な思い出とその救いに向けた展開が見られる。 「キューネ姫夢物語」では、主人公はロボットたちの演じる夢芝居に取り込まれ、地球で失った肉親との再会と、さらには救済への試みが見られる。「小人と巨人」では、巨人に虐げられた小人族の救いにむけた奮闘が描かれる。「ノルル星の運命」では、星の進化と、その中に生きる種のあり方が問われる。 最後の二つの章では、宇宙は結局、思いのほか小なるものとされ、それより大なるものとしての須弥山が立ちあらわれる。「地獄のような星」では、主人公は疫病で失った母親との再会を果たし、脱出を図ろうとする。 「天国のような星」では、主人公たちは阿修羅率いる地獄軍と帝釈天率いる天国軍との須弥山をめぐっての戦いに巻き込まれてしまう。大なるものと思われた須弥山も戦いの最中に反転してしまう。また大海では、津波で失った衆生たちが見つかり、海印三昧(大海に一切の事物があまねく深く映し出されるような心の静まり)を経験をする。 梵語に訶(か)という字があるが、宇宙の本体の原因と条件の把握しえないことの象徴とされる。表紙で、「か」の字が上巻ではすこし傾き、下巻では反転させたのはそのためである。また上巻では背景の色は宇宙を表す黒とし、下巻では海を表す青とした。 しかし以上は俗物たる著者のうがったこじつけにすぎず、たんに姑息な解釈であるからして、むしろ読者が楽しんで得られた内容こそ真実であると著者は信じるものである。
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