ゲッチョ先生で知られ昆虫に関しての著書の多い著者が石垣島の岩崎卓爾や「正木任(マサキツトム)」の息子である譲さんとの出会いを通し、戦前に早世した「ツトム」という世にあまり知られていない人物の残したもの、果たせなかったことをたどる。
ツトムが生前書き残そうとした本は世に出ることはなかったが、こうした形で「ツトムの本」が世に出ることになったのは先人への敬意と自然観察の大切さを実感している著者の思いによるものではないだろうか。岩崎卓爾というユニークな人物、生物学者の来島など戦前の石垣島、生物学界も垣間見ることができる。また岩崎卓爾ら先人の「残してくれたもの」の貴重さ、「自然を見つめる目」はさまざまな形で現在も受け継がれていることがわかる。
この「ツトム」の名(マサキ)が和名につけられている生き物は以下の6つである。それは「マサキウラナミジャノメ」(八重山固有のチョウ)「マサキルリモントンボ」(台湾で記載されたイトトンボの種類の石垣。西表島固有亜種)「マサキルリマダラ」(東南アジアに分布し、石垣島で初めて見つかった迷蝶)「マサキオオツバメガ」(東南アジアに分布し、石垣島で初めて見つかった遇産蛾)「マサキベッコウ」(尖閣諸島と西表島に固有のカタツムリ)「マサキカニダマシ」(海岸動物のカニダマシの仲間)である。
■目次
本書の主な登場人物
序章 この本が生まれるまで
生き物との出会い 少年時代に出会った本 正木任という人物
第1章 卓爾の虫
石垣島の「マサキさん」と「岩崎さん」 卓爾との出会い テンブンヤーヌウシュマイ(天文屋の御主前) 卓爾の「新種」 卓爾の幼少期 卓爾と虫との関わり 生物季節観測 卓爾の生物季節観測記録 新種の名前 ホタルとセミの名前 卓爾の虫のその後
第2章 ツトムの虫
ツトムの履歴書 卓爾の右腕・瀬名波長宣 ツトムの記憶 八重山生物調査団 大島広の来島 江崎梯三の来島 珊瑚礁の昆虫たち 隠された発見者 ツトムの活躍 尖閣諸島の調査 コノハチョウの謎 コノハチョウの生態解明 ツトムの手紙 最後の手紙
第3章 継いでいくものたち
マサキさんの思い出 川平への道 肌で感じる気象観測 孫好さんの話 戦中から戦後へ 歌のカニたち 尖閣調査 気候や星を表す島の言葉 かつての自然利用 薬としての利用 薪や炭の利用 身近な植物の変化 原野の消失 八重山の自然破壊 気象観測業務の変化 止まない好奇心 島の歳時記 継いでいくもの
終章
系譜上の虫 終わりに
引用文献
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