残り少ない暑中休暇を過ごすべく、秩父の『りら荘』に集まった日本芸術大学の学生たち。一癖も二癖もある個性派揃いである上に各様の愛憎が渦巻き、どことなく波瀾含みの空気が流れていた。一夜明けて、りら荘を訪れた刑事がある男の死を告げる。屍体の傍らにはスペードのA。対岸の火事と思えたのも束の間、火の粉はりら荘の滞在客に飛んで燃えさかり、カードの数字が大きくなるにつれ犠牲者は増えていく。進退窮まった当局の要請に応じた星影龍三の幕引きや如何?贅を尽くしたトリックと絶妙な叙述に彩られた、純然たるフーダニットの興趣。本格ミステリの巨匠鮎川哲也渾身の逸品。
レビュー(43件)
時代背景が少し古く、やや読みにくさ有り
分厚いページの中で、次々と殺されていく仲間たち。時代背景が古いので、少しぎこちなさを感じずにはいられませんが、ある程度の爽快感は味わえました。ただ、警察の捜査が杜撰すぎるというか…私は色彩検定の資格持ちなので、色が強調された場面が度々出てくることで、なんとなくトリックが読めてしまいました。そしてそのトリックも少し疑わしいので、推理小説としては星ひとつ減点という評価です。