著者は歴史研究者のはしくれのつもりでいて、学術論文を書くときは、つとめて感情を殺して、冷たい文章と論理とを使っている。が、本来はとんでもない感傷家である。そして、歴史が好きなのは、歴史のなかの生きている人間が好きだからである。だから、そのような感傷をチョッピリ満足させるために、心をゆさぶった話や歌をチョコチョコと書きとめている。題して「無告之民」と言う。この「無告之民」は『書経』の「無告之民を虐げず」とあるのからとったもので、おのれの苦しさ悲しさをだれに訴えてよいのかわからない庶民のことを言うことばである。…「無告之民」の心は、いまも歌われている。
レビュー(0件)