この快楽的人間とは対照的に、動態の理論に対応した精力的人間は、行為のもたらす快楽と苦痛の差引計算を行為の基準として行動する経済主体ではなく、外形的・数値的な証拠では基礎付けられない創造を担う存在であった。精力的人間としての企業者が惹き起こす革新は、事前には、まったく予見できないものであった。シュンペーターは、事前には、誰によってもその価値を数値的に考量することができず、かつ外形的・数値的な証拠では基礎付けられない創造的な行為こそが経済の発展にとって最も重要な役割を果たしているというヴィジョンを持っていた。企業者が遂行する革新は、快苦原則を核とする功利の原理、および帰結主義の原理の外部に存在する。(本文より)
序章
第1章 日本におけるシュンペーター経済学の導入ーー福田徳三と高田保馬を中心にして
第2章 創造性ーーシュンペーターとベルクソン
第3章 社会科学方法論ーー経済学方法論と社会学方法論
第4章 経済人の概念ーー功利主義批判をめぐって
第5章 時間の概念ーーベルクソンの時間概念との比較を通じて
第6章 不確実性ーーフランク・ナイトの不確実性との比較を通じて
終章 ヴィジョンと理論の相剋ーー革新と銀行家をめぐって
補章 シュンペーターの経済思想の現代的意義ーーシュンペーターからグラミン銀行へ
むすび
あとがき
初出一覧
参考文献
索引(人名・事項)
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