本書は徳川将軍が小金原で実施した御鹿狩の全貌がわかる一書で、徳川幕府が最後に見せた一瞬の輝きを伝えるものです。小金原御鹿狩に興味のある方、とくに幕末の嘉永2年に行われた小金原御鹿狩を詳細に知りたい方、あるいは近世史一般にご関心のある方々にもお勧めいたします。小金原御鹿狩に関する出版物や文献は、大きく分けて二つあります。ひとつは、自治体史や資料集に取り上げられているもの、もうひとつは研究者による学術論文です。前者は、小金原周辺地域や勢子人足を出した地域に残る古文書を基礎としたもので、その地域の歴史資料として編さんされたものですが、小金原御鹿狩の詳細や全体像が解説されたものは少ないようです。一方後者は、歴史研究者による研究論文であり、御鹿狩の目的や、幕府の組織構造・人事制度・軍事調練の実態などを解明しようとするもので、学問的に貴重な論考ですが、当然のことながら、百姓勢子人足については触れられていません。これに対して、本書は関東各地に残された地域の古文書を調べ、かつ深く堀り下げ、百姓勢子人足の実態を浮き彫りにするとともに、幕府の公文書が豊富に収載されている「大狩盛典」(国立公文書館所蔵)などを活用し、小金原御鹿狩の全貌に迫ろうと詳細に調査分析した唯一のものだと言えるでしょう。本書の目次は以下のとおりです。序章 〜十助の小金原御鹿狩(前編)第一章 小金原御鹿狩とは第二章 嘉永二年小金原御鹿狩の決定と準備第三章 嘉永二年小金原御鹿狩における勢子人足第四章 将軍と旗本たちの華麗な御鹿狩第五章 獲物の下賜と褒賞・扶持第六章 小金原御鹿狩あれこれ第七章 嘉永二年小金原御鹿狩を振り返る終章 〜十助の小金原御鹿狩(後編)なお、「序章」「終章」は、嘉永2年の小金原御鹿狩の世話役を勤めた名主の跡継ぎの若者「十助」を主人公とし、二泊三日の御鹿狩の追い立てに加わった時の心情を描いたショート・ストーリーです。
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