本書は、一九八五年と二〇〇〇年に出版された『ラテンアメリカ 社会と女性』および『ラテンアメリカ 新しい社会と女性』の続編であり、一五年間隔でラテンアメリカ社会の変容と女性の置かれた環境の変化を検証するシリーズの第三冊目にあたります。一九八五年版では七カ国、二〇〇〇年版では一〇カ国、そして今回の二〇一五年版では、ラテンアメリカ三三カ国のうち二〇カ国を取り上げることができました。この国数の拡大は、わが国におけるラテンアメリカ研究の広がりと研究者の増加を表しています。
シリーズ三冊目にあたる本書では、「社会の多様化」と「女性の能力開発および社会進出」に焦点を当て、この地域の社会がほぼ四半世紀間にどのように姿を変えてきたかを紹介します。ラテンアメリカ諸国には「マチスモ」という、日本の伝統文化にも通じる根深い男性優位主義の社会通念が現在でも残っており、歴史的に女性は男性に従属した存在でした。しかし国連をはじめ、女性の能力開発と自立を促すさまざまな国際機関に後押しされて、一九九〇年代からラテンアメリカの多くの国が女性の権利擁護と地位向上に向けた努力を続けてきました。
その結果、二〇世紀末まで開発途上国とみなされていたラテンアメリカ諸国の社会、とりわけ女性をめぐる環境は大きく変化しました。現在、若い世代の女性の教育水準は男性のそれを超え、管理職や専門職に占める割合は日本よりも高く、女性の政界進出を支援するジェンダー・クオータ制の採用によって意思決定過程への女性の参入も増大しています。議席におけるパリティ(男女同数制)を法律で規定した国がすでに六カ国あり、アルゼンチン、ブラジル、チリでは二〇一五年現在、女性大統領が二期目を務めています。二〇一四年のデータによると、ラテンアメリカ地域は男女差別の格差縮小の実績で世界のトップとなりました。日本の現状と照らし合わせながら読んでいただければと希望しています。(くにもと・いよ)
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