精神分裂病は最大の難病の一つである。その基本障害の性質は、さまざまな形で言語化されてきた。「精神内界の失調」(ストランスキー)、「指揮者のないオーケストラ」(クレペリン)、「燃料のないエンジン」(シャラン)など。本書の著者ミンコフスキーは、比喩からは真の科学は生まれないとし、「現実との生ける接触の喪失」という概念によって、単なる臨床的疾患であることを超えた、ある特殊な〈病的な人間〉の人間学的把捉をここに試みたのである。
この概念は、自閉性から出立する。自閉性には、「豊富なる自閉性」と「貧弱なる自閉性」があり、この後者が分裂病の統一的理解にとって重要性をもつ。なぜなら、一つの疾病を規定すべき基礎は、侵された人格の欠損面を明らかにすることから、得られるからである。
ミンコフスキーの本書は、その師ブロイラーを乗りこえた新しい理論を打ち立てたーーL・ビンスワンガーとともに、哲学の援用を受けることによって、最近精神医学のパイオニア的役割を果たしたーーばかりでなく、きめの細かい精神病理学的記述によって、精神分裂病の理解のための一般的案内書として、読書界にながい生命を持ちつづけている。
日本の読者へ
新版へのはしがき
序論
第一章 分裂性と同調性
A 一般的考察
B クレッチュマーの分裂性性格と循環性性格、類分裂性性格と類循環性性格、ブロイラーの分裂性性格と同調性性格
C デルマ、ボルによる性格の研究
D 分裂性、同調性の概念を導入することによって生ずる精神病学の諸問題
1 分裂性と分裂病、地盤と疾病
2 分裂病および躁鬱病の基礎としての分裂性と同調性
第二章 精神分裂病の基本障碍と分裂病的思考
A 現実との生ける接触
B 知的痴呆と分裂病的痴呆
C 分裂病者の空間的思考(病的合理主義と病的幾何学主義)
第三章 内閉性
A 精神病の内容と内閉性
B 「現実との接触喪失」の健常心理における原型としての夢想と人格的活動(エラン)の周期性、人格的活動の分裂病的障碍、豊富なる内閉性と貧弱なる内閉性
第四章 分裂病的態度と精神的常同症
A 病的夢想
B 類分裂病(スキゾマニー)なる概念の批判、正常夢想と病的夢想
C 病的不満と単純性類分裂病
D 病的悔恨と疑問的態度
E 分裂病的態度と精神的常同症
第五章 分裂病概念の治療的意義
A 分裂病に対する「的外れ」の批判について
B 分裂病概念の治療的意味
C 実際的応用
第六章 展望
A 体質的類型学
a 癲癇性性格
b 感情について
c 理性型と感覚型
B 精神病理学的機構
a 「分割」と結合
b 分割、内閉性、解体
c 理論
d 因子的分析
C 形の世界
a 形の世界と分裂病の精神病理学
b 形式的能力
D 言語
訳者あとがき
レビュー(0件)