春の京都にあふれるソメイヨシノ、嵐山の春秋を彩る桜と紅葉、御堂筋を金色に染める銀杏並木、瀬戸内の島々を見晴らす雄大な眺め、日本のアルプスとうたわれた滋賀のはげ山ーー。
これらはいずれも近代につくられ、あるいは発見された風景だ。その背後には風景を編集し、物語を紡ぎ、観光地を生み出す近代的な仕組みがある。荒廃した森林の施業、都市計画の実現、国立公園の設置など、行政はさまざまな要請から風景の編集を企図する。その周辺には風景に価値付けする学者たち、郷土を愛する地域の住民、風景で利益を得ようとする観光業者などがいる。風景に関わる人々はじつに多様だ。誰が風景を編集するのか、そして風景は誰のものか?
序論
第一章 京都の桜ー古都が桜で埋め尽くされるまで
一 桜はイメージで植えられるのか
二 桜の風景ー近世の諸相
三 ソメイヨシノの登場ー近代・戦前の京都の桜
四 市内にあふれるソメイヨシノー戦後京都の桜景観
五 なぜ桜の景観はたちあがったのか
第二章 嵐山の紅葉ー吉野の桜か、王朝の紅葉か
一 嵐山の荒廃と再興
二 嵐山の施業における景観形成
三 紅葉の嵐山に編集しなおすー一九六〇年代の転換
四 桜と松の嵐山への再編集ー一九八〇年前後における回帰
五 桜・紅葉の共存への再々編集ー観光の二一世紀
第三章 御堂筋の銀杏ー大大阪計画と街路樹
一 銀杏は大阪のシンボルとなった
二 大阪市都市計画とその背景
三 御堂筋建設
四 御堂筋街路樹の成立
第四章 瀬戸内海の島々-風景の価値創造
一 風景の選定に学者はどれほど関われるのか
二 瀬戸内海国立公園の風景は準備された
三 牛窓亀山公園の「風景開発」
四 笠岡諸島白石島と高島の郷土宣揚策
第五章 滋賀のはげ山ー風景の価値転換
一 禿赭地の拡がり
二 史蹟名勝天然紀念物による歴史的価値付け
三 開発される風景
終章 風景と環境を考える
あとがき
掲載図版一覧
索引
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