欧文をモデルにしたある一定の文体が安定しようとするその同じ時期に、必ず“語り”の手法を基本にした表現が、単なる「反動」としてではなく、新しい表現状況と密接に絡み合いながら登場してきたことも文学的「近代」の重要な特質であることを解明する。
第1部 構造としての語り
第1章 近代小説と〈語り〉
1 小説言説(ルビ:ディスクール)の生成
第2章 近代的〈語り〉の発生
1 葛藤体としての〈語り〉--『浮雲』の地の文
2 〈語り〉の空白/〈読者〉の位置ーー他者の原像
3 物語(ルビ:ストーリー)の展開と頓挫ーー『浮雲』の中絶と〈語り〉の宿命
第3章 〈人称〉と〈語り〉の主体
1 視点と〈語り〉の審級ーー明治初期翻訳文学での自然と文体
2 〈記述〉する「実境」中継者の一人称ーー森田思軒の「周密体」の成立
3 〈語る〉一人称/〈記述〉する一人称ーー一八九〇年前後(明治二十年代)一人称小説の諸相
4 〈語り〉と物語の構成ーー構成論の時代/四迷・忍月・思軒・鴎外
第4章 〈書く〉ことと〈語る〉ことの間で
1 『坊っちやん』の〈語り〉の構造ーー裏表のある言葉
2 『心』での反転する〈手記〉--空白と意味の生成
第5章 〈語る〉ことから〈書く〉ことへ
1 『蝿』の映画性ーー流動する〈記号〉/イメージの生成
2 エクリチュールの時空ーー相対性理論と文学
3 文字・身体・象徴交換ーー流動体としてのテクスト『上海』
初出一覧
あとがき
増補 百年目の『こころ』--言葉の時差のサスペンス
1 百年目の『こころ』--言葉の時差のサスペンス
増補版あとがき
解題 「歴史の詩学」を求めて 林少陽
レビュー(0件)