二十一世紀もあと二十年で終わるという頃に「核の冬」が起きた。「核の冬」とは、世界全面核戦争で生じた「すす」が地球の上空を覆い、地表に届く陽の光を激減させて地表が寒冷化するとともに、上空を高温にしてオゾン層を破壊し、強い紫外線が地上に降り注ぐ状態のことだ。 地上には十年ほど人が住めないので、新潟県の湯沢近くの地下深くに、大規模な核シェルターが建設され、志願した十万人の日本人が冬眠して「核の冬」をしのいだのである。一方、宇宙には、海王星と天王星の惑星探査を終え、天王星を出発して地球に向かっていた一隻の宇宙船があり、八人の日本人隊員が搭乗していた。天王星出発時に地球での「核の冬」の到来を知ったのである。地球までは、あと十三年の行程であった。核シェルターで冬眠した十万人が、九年後から十一年後まで三期に分けて地上に戻り、集団で新しい日本の社会を作りはじめた。統括者の常義は、平等社会を目指したが、十万人の隊員は徐々に生きる気力を失っていった。そこで、自由主義を多少加味したが、三年もすると、彼らの不満は限界に達する。だが、あまり大々的に自由主義を目指すと、国が乱れる怖れがある。 一方、宇宙船の隊員は、十三年の冬眠から覚め、宇宙ステーションにたどり着き、独力でスペースシャトルで地球に帰還するが、宮崎の宇宙基地に着陸する際に滑走路上の小さい障害物で、機体が破損し、隊長だけが助かる。約一年後に湯沢と連絡が取れる。 この小説は、このような状況の中で、これらの日本人がどのようにして、日本人らしい新生日本を作るか、という話である。正に、旧約聖書の中の「創世記」に出てくるノアの方舟の話に似た、十万人の日本人社会が直面する「未来版創世記」である。
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