6人の視点で描かれる圧倒的な群像劇。多くの登場人物の中、10年前の事件を担当した刑事の気迫と10年前の被害者の父が行う独自の捜査が、狂気を帯びるほど鬼気迫ってずっしり。完全黙秘の容疑者に対して状況証拠しか揃わない焦燥。小さな真実を地道に積み重ね、じわじわと真相に迫る警察の執念。ベテランと若手の刑事の人間模様や新聞記者のひたむきさなども絡ませる丁寧な描写は中弛みなく圧巻。とある犯罪心理学者が頻出するが、まさに奥田さんの描く愛すべき変人。本人視点では描かれない犯人の心理も代弁してくれている気がする。余談だが、刊行記念インタビューには奥田さんのこだわりが詰まっていた。あわせて読んでもらいたい。