凡庸な小説に飽きたのならw

夢野久作の作品を初めて知ったのは、ロック・アーティストになるが「犬神サーカス団」→寺山修司を漁っている過程で、「犬神サーカス団」の曲名と同一の「少女地獄」を発見したからである。 一読して驚いたのが、この短編の集まりは時代のズレがあれば恐縮なのだが昭和9年から11年頃のものだと言うことであるが、修辞表現や言い回しに殆ど皆無と言っていいほど古めかしさを感じさせられなかったところであろうか??? これは偏に、文体に個性が見受けられにくいとの見方もあるかもしれないのだけれども・・・。 内容の方は、あくまで個人的な見解でいえば「ガロ」系が好きな方には堪らない作風である感じであるが、小説で言うと、比較媒体の時代がおかしいかもしれないが、京極夏彦のものよりも猟奇的な感じはせず、谷崎潤一郎のような偏った性愛を著している感じでも無い雰囲気だった。 この書はタイトル作の他に3編の短編が収録されているが、全てのレビューは控えさせていただき、「少女地獄」だけに絞ると、その作品中に流れているテーマは、虚言癖の女・マゾ気質の女・聖職者への復讐を仕掛ける火星の女の3つから成り立っている。 虚言癖の女は、昨今でもよく見聞きするテーマでプロットとしては今ひとつの感じ。 よりエンターテイメント化するのであれば、臼杵先生の家庭をより無茶苦茶にしていた方がより面白い感じがするのだが、筆者が望んだテーマが虚言が悪であるのかと考えた場合、これはこれで良かったのかもしれない。 マゾ気質の女は、書簡形式の流れが秀逸。 また、裏の性格に特に難がある男と知りながらも惚れていってしまう女の感情が見事なまでにその経過を含め再現されている。 火星の女は、これら3つの中で、1番エンターテイメント化が絶品なもの。 平たくいえば勧善懲悪とも取れなくないが、他の2作品と共に主人公は自害するので行間を読めば、色々な解釈は出来る可能性はある。 ただし、冒頭から始まる連続する不気味だけれども興味をそそられる猟奇事件の新聞記事。それに合わせての主人公の綿密な中での爽快な復讐劇は、3作品中ジェットコースターのような勢いで没頭させられてしまった。 特に現代のベストセラーを読むことが多く、尚且つそういった小説に飽きてこられた方には是が非でもお勧めしたい作品。