偉大なカマドケシ

2年ほど前に阿部サダヲさん菅野美穂さんの映画ではなくドキュメンタリーの「いのちの林檎」について教えてもらって公式サイトを見ましたが、予告編を見るのも自分には非常に辛く解説を読んで更に・・・という状態でいのちの林檎は上映機会があっても観る事はしないかも、と思いつつ木村さんの林檎について書かれた「奇跡のリンゴ」には興味があったので購入しました。文庫本で260項、普通なら数時間で読める量ですが2日かけてじっくり読ませて頂きました。著者であるノンフィクションライターの石川拓治氏のある意味淡々とした文章は感動を煽らず過剰に共感を呼ぶ意図もなくきちんとした知識に基づいたもので、こまかい所でちょいちょい興味を引かれる雑学的知識も多かったです。 基本的には如何にして無農薬でりんごを育て収穫に至ったか、という話ですが、人それぞれ受け取り方は違うのでしょうがもっと深い部分の生き方、について書かれているようにも思います。筆者が書くところの「公案」何故木村氏が生き死にを考える程無農薬の林檎に拘ったのか、それが一番知りたいと思いつつ読み進めて、読後、さらりと書かれていた「天命」以外に理由は無いのだろうな、と思いました。 実は「化学物質過敏症の妻もしくは娘の為に!」とかいう感動モノかとも思っていたのですが、良い意味で裏切られた感があります。木村氏がりんごの木に謝っていたという記述部分では自分も化学物質発症後世話が出来ず枯れてゆくバラの木に謝ってまわった事を思い出してちょっと泣きましたが、所々に書かれたユーモラスな木村氏の言動にクスリと笑いつつ読み、読後はある種の爽快感を感じました。昼行灯よりさらに救いようの無い「カマドケシ」と呼ばれた事はある意味仕方なかろうとも思いますしご本人以上にご家族のご苦労も多かったと勝手に推察して、過ぎた日々を笑える様な成果が実り本当に良かったと思います。木村氏でなければ成し遂げない事だった偉業だと思いますがきっとご本人はそうは思っておられないのでしょうね。林檎や農薬を色々なものに置き換えて考えることが出来る魅力のある本です。