架空と真実
巷では【山岳小説の最高峰】とまで言われ絶賛する読者が多いのだが、
山岳小説好きを自認していながら、なぜか今まで手に取らなかった小説。
結論から言うと、山岳小説好きである自分の嗅覚は間違いでは無かった・・・
フィクションの世界はフィクションの世界として、
ノンフィクションやドキュメンタリーは真実を忠実に、と言う事。
この相反するものを混ぜこぜにしてはいけない。
架空名義の人物を登場させているのなら
加藤文太郎も実名ではなく仮名とし、徹底的にフィクションとするべきである。
これだけを読んで加藤文太郎の伝記と位置づけてしまう人も多い事だろう。
どう読んでもこいつが遭難の原因をつくった悪者と思える描き方をされている
【宮村健】にはモデルとなった人物もいる。
加藤文太郎は実在の人物なのだから、調べようと思えば様々な情報を得られる訳で、
自分は実際に調べてみてガッカリした・・・
作者は富士山観測所員だった当時に加藤文太郎と面識があったと言っているが、
それは面識のみで、人となりを深く知るまでの関係ではないし、
本当のところなどわかろうはずも無い。
それを読んですべての人が幸福感に包まれるならよいが、
これが元で不幸になるような人が出てはいけない。
そうなる要素があるのならそれはすべてフィクションとするべきである。
読み応えのある小説と言うのは間違いないのだが、
上巻のストイックな加藤文太郎と
下巻での結婚から遭難死に至るまでの優柔不断な加藤文太郎の
違いには本当のフィクションだったとしても違和感が残る。
上巻は星4
下巻は星2とします。
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