春霞のような文章

全編に渡り、春霞のようにモヤーっとした読後感。この筆者独特の筆さばきで、さらさらと気軽に読み進められるのに、ひとつひとつの物語の断片が心の底にいつまでも沈殿して残る。どれも清涼感溢れるような話ではないのに、何故か不愉快な気持ちにならないのが川上未映子作品を好きな所以。 3.11をベースにした短編集「愛の夢とか」も大変好きな作品ですが、今回はコロナ禍の世界で繰り広げられる登場人物たちの生活であったり呼吸であったり。暗い世情を書きながら、その実暗くなりすぎることなく…まさに春霞のように読者の心に纏わりつく文体。次作が既に待ち遠しいです。