漱石が新聞社入社後に初めて手掛けた小説。連載を意識したのか、前半は登場人物の人間関係や、場面展開の入れ替わりが頻繁で、非常に分かりにくい。そこを通過すれば、物語自体の筋は難解ではないので、すんなり読める。ある主要登場人物の取った行動が、美しいが高慢な藤尾に突然の悲劇をもたらす。読み様によっては、かなり喜劇的でさえある。修辞的表現が随所に散りばめられていて、それが少々邪魔な時もあるが、漱石の観察眼の見事さはさすが。