200年にわたる十字軍シリーズもいよいよ完結。
主役をはる人物がそれぞれの時代にたくさん出てきて、この200年をわずか3巻で終わってしまうのはあまりにももったいない感じがしました。
第一巻のゴドフロア、ボードワン、ボエモンドにタンクレディのハラハラドキドキの攻略戦。
第二巻は団体としてのテンプル聖堂騎士団、ホスピタル病院騎士団が主役をはりつつ、癩王ボードワンとサラディン。
そして、この第三巻は一番有名といっても良い第三次十字軍が前半の山場。獅子心王リチャード、フランスのフィリップ二世、そして敵としてのサラディンとの駆け引きが描写するどく表現されています。
それぞれの主役級登場人物を掘り下げてじっくりと理解しながら読みたいのですが、テンポ良く進んでいくために(良い意味で)せかされている感じがしました。
塩野さんの表現の仕方がすばらしいのと、図表を多用してくれるのでとてもよく理解できます。地図や人物そして当時の絵が要所要所ででてきて、歴史を面と線と合わせて立体的に捉えることができます。こういったところは他の歴史小説家とは一線を画していて大好きです。
しっかし、一神教どうしの聖地を巡る対立は永遠に解決しようのない問題だと歴史を振り返ってみてよく分かります。今のイスラエルとアラブの対立構造の根本ははるか昔の十字軍時代からの人(いや神か?)の業の連続です。
このものすごく深い問題に、戦いではなく交渉と話し合いで解決を導き出したサラディンとリチャード獅子心王が、個人的にとても共感できます。流行の言葉に「共生」がありますが、一神教同士の共生という、為し難きを為したこの二人には格別の敬意をもっています。
さらには、法王にはボロクソ言われながらも、戦うことなしに講和でイェルサレムの奪還をなしたフリードリッヒ二世が別格です。教条主義的な法王教書などどこ吹く風、実利実益と人の命を最優先したフリードリッヒを高く評価します。
テンプル騎士団と病院騎士団の「神がそれを望んでおられる聖戦」を自己目的化した集団には十字軍とシリア防衛のエンジンであったことは認めつつも、その狂的信仰、原理主義的性向が果たして何をもたらしたかよく理解できました。
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