今までいくつかノーベル文学賞受賞作家は読んできたけれど、一番賞にふさわしいような気がした。 散文~詩の間をゆらぐような白をテーマにした短文からなる作品集で、長くはないのでとっつきやすいのかもしれない(前にギリシャ語の時間を読もうとして挫折した) ただ短さと理解しやすさは比例しない。共振しない章は謎めいて「遠目に」眺めて終わってしまうけれど、その間に突然どうしてこの作家は私の今の現状を知っているのか、こんな言葉で端的に表せるのか、なぜ、と雷撃を食らったかのようなショックで涙とともに読み進めなくなる章がある。 安易な慰めでも同情でも単純な鎮魂や悲哀だけでもない何か、作者の内外の白いものたちとしかいいようのないものが並んでいて、それを読み手の白いものたちが補完しながら、作外に広がっていくような、そんな作品集だと思った。 斎藤真理子さんの翻訳と解説がほんとうに見事です。大好きな訳者さんの翻訳で読めてよかった。 電子書籍で一度読んだけれど、単行本造本も作者の意を組んで素晴らしいと聞いたので買い直しました。