本書はもともとは1981年に発行されたが「何故今の時代に?」なのかわからないが昨年11月に新潮文庫版で発売された。事件は戦前の片田舎の話であるが、22歳の犯人が祖母に甘やかされ育った点、友人も皆無に等しく、自宅の屋根裏に部屋を作ってほとんど外出しなかった点、など今で言う「ひきこもり」であったところが現代にも通じて興味深い。 本書の構成については、前半でおもに事件の概要が検死報告書や検事が聴取した関係者の証言、および被害現場の村の見取り図など、事実に基づいて淡々と書かれている。後半は時系列で犯人の生い立ち~犯行の模様までを詳細にしることができ、特に犯行当夜のその生々しい表現には戦慄をおぼえる。また、犯人は当時起きた猟奇的な「阿部定事件」に、相当な興味を持っていた点も本書では詳細に書かれている。ページの最後のほうで唐突に犯人の当時の顔写真が掲載されていて、ギョッとする。 とにかく、これだけ読み応えあるノンフィクションに出会ったのは久しぶりである。