癌治療と腸内フローラについて

アッカーマンシア・ムシニフィラ菌と酪酸の効果について知りたく本書を購入しました。 現在、癌治療における第四の選択肢として、免疫チェックポイント阻害剤を用いた免疫療法が着目されています。しかし、免疫療法の効果がある人は10%から20%ほどにすぎません。そこで免疫療法について国内や国外の最新の論文を読むと、腸内フローラが免疫療法の効果に影響を与えていることがわかりました。食物繊維や糖尿病治療薬であるメトホルミン、クルクミンが免疫療法の効果を高めるという論文もありましたが、いずれも腸内フローラに関係してくる話です。 またそれらの論文には抗生物質を含む抗菌剤を服用すると免疫療法の効果が極めて低下するといったものが多数あり、本書を裏付けるものとなっております。 本書に沿った専門的な話をすると、免疫細胞であるT細胞が暴走することでアレルギー反応といった自己免疫疾患を引き起こしますが、T細胞を制御するTreg細胞の働きを正常化することで、それを防止することができます。Treg細胞を正常化するには酪酸を増やすことが重要ですが、腸内で酪酸を増やすことにより、全身において血中の酪酸濃度を高めることができます。すなわち、腸内の酪酸を増やすことは、全身のTreg細胞の正常化を図ることにつながります。 一方で癌細胞は細胞内にあるキラーT細胞をTreg細胞が抑制しすぎることによって本来備わっている免疫力が発揮されず、癌細胞が増殖することになります。すなわち癌の治療においては、いかに癌細胞中のTreg細胞の働きを弱めるかということが重要となり、本書とは真逆の話になります。しかしながら、本書を読んだ上で「癌細胞においてはTreg細胞はなんらかの異常をきたしている。そのため酪酸によってTreg細胞を正常化するこでヘルパーT細胞のバランスを正常化し、キラーT細胞が活発化、すなわち免疫療法が効きやすくなる」と、仮説を立てることもできるのではないでしょうか。 免疫は腸内環境が7割と言われており、良い腸内環境を作るには、準必須アミノ酸であるグルタミン、水溶性食物繊維、不溶性食物繊維、オリゴ糖が必要です。本書ではフラクトオリゴ糖についてのみ書かれておりますが、グルタミンやグァーガム分解物(水溶性食物繊維)を摂取することも非常に重要であると私は考えます。