なぜを考えるために
平地の予定調和の生活に対して、敢えて非日常にに身をおく「登山」という行為に纏わる近代登山以降の重大事件を集めた事例分析集。山岳遭難事例について定評ある作者の筆致は常に抑制されており、当時メディアの耳目を集め、しかし分析が不充分に終わった事例を再検証し分析している点はいつもながら好感を持つ。
これは決して山岳遭難事故のセンセーショナルな事案を集めた「実録物」でも「ドキュメントルポ」でもない。やまの事故の「なぜ」を「わたし」の問題に置き換え、自問に換ええる事例の分析力と構成力は今更ながら安定した実力を感じる。
ただし、これは事例集であり、個別の事例への稿量は少ない。もちろん、個別の事例に裂き得る原稿量と、他の事例とのバランス量や文章の濃度から言っても、メディア報道の比率がある程度の情報量を占めることで、定評ある作者による事例と分析という掘り下げについては、明らかに同著者のドキュメント遭難シリーズに比べて弱い点はむしろどうしようもなかっただろう。編集上も難しかったかと思える。
その部分をどう捉えるかは読者側のベクトルによって異なると思う。日本近代登山史上の世間を騒がせた遭難事例を、落ち着いた目線で色々学ぶと言う向きには良いのではないだろうか。
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