高校数学の復習

整数の学習と研究を、釣り人は鮒釣りから始まり鮒釣りで終わることに例えることから始まる本書は、どの項目も、その項目の学ぶ意義を前振りで説明して、そこが楽しい。下巻を含めると、戦後の高校数学として扱った内容をすべて網羅している。下巻では2次曲線や統計もきちんと説明してある。上巻は、1章で数と式、2章で方程式・不等式と論理、3章で平面図形と関数、4章で順列・組合せと確率、5章で指数・対数と数列(数学的帰納法を含む)、6章で三角関数と複素数平面、補章で整数と数学的帰納法の応用から成っている。補章では素因数分解の一意性と一般のnについての相乗平均と相加平均の不等式の愉快な証明などがあるが、他の章は、最初から順番に学べるようになっている。また上下巻全体を通した索引もきちんとあり、高校数学の辞典のような扱いもできるだろう。目を引く点は、論理の説明をわりと早い段階にあり、とかく日本人が間違いやすい「すべて」と「ある」の用法が平易に述べられている。2次関数で扱ったときの「上に凸」と「下に凸」の定義と、下巻の微分(2次導関数)で扱うときの「上に凸」と「下に凸」の定義の関係が、下巻でしっかり説明されていたり、経営数学で扱われる線計画法の考えが、上巻では直線と平面のところで、下巻では空間図形のところでしっかり図を用いて説明されているように、入試問題だけで安易に編集したいわゆる普通の学習参考書とは一線を画す書である。実際、週刊東洋経済2010年4月10日号と4月17日号で、元外務省で有名な佐藤優さんが絶賛記事を書かれていることが納得できる。銀行強盗団や、台風の進路や、消費者金融の元利均等返済や、滑走路に向かう飛行機の高度や、グーとパーだけのゲーム理論的な問題、等々の面白い生きた例が多くあるので、読み物としても飽きない。しかしながら、もっとも評価したい点は、「すべて」と「ある」の用法を大切にしながら、地道な一歩ずつ丁寧な論理展開をしていることであろう。