昔の「ポーの一族」は詩情に溢れ、己の意に反して永遠の少年となってしまったエドガーの心のままに感傷的でした。 数十年後に描かれた今作は、萩尾先生のここ最近の作品と同じく、傷ついた子供のまま癒やされることなく大人になってしまった人=アーサー卿の心情にそう形となっています。 今作もやっぱり萩尾先生らしく海外文学の重厚な小説を思わせる素晴らしい漫画です。 しかし、ここにはもうあの感傷的で詩的なみずみずしさに溢れたエドガーはいません。 エドガーはもはや自分を置いて変わりゆく世界を見つめる主体ではなく、日常に紛れ込んだ異物としてアーサーに観測される客体なのです。 これは致し方のないことなのでしょう。先生だっていつまでも少女ではいられないのです。 それでも私は、もう一度あのエドガーに会いたかったと思ってしまうのです。