投資本にも分散投資は必要?

本書の前半は、金銭管理全般に関してで、目新しい知見は特になかったが、常套的ではあっても良識的な見解を、著者の言葉で説かれて再認識するのも悪くなかった。後半からいよいよ、「投信に騙されるなに騙されるな」の本題に入るのだが、その主張の中身は、何の事はない、「日本・米国等の先進国の株には将来性は期待できないので、その配分を新興国の株に置き換えるべし」という、単にそれだけの話である。そのようなスタンスもあるとは思うが、それを一般読者に、あたかも高い普遍性を有する論理の如く説くのは乱暴過ぎはすまいか?ただ、ここでひとつ著者の肩を持つなら、「日本株が20~30年以上の長期スパンで見ても右肩下がりである事実」を指摘しているのは、何も本書ばかりではないが、本書の御本家たる竹川美奈子はじめ、内藤忍、木村剛など、長期分散投資を唱える蒼々たるカリスマの先生方の面々は、彼らの著書の中でこの事実を読者に明確には示してない(むしろ誤解を来すようなデータの示し方に見えるのは被害妄想のせいか?)。この事実が直ちに、本書の著者が唱えるところの、「先進国の株はやめて新興国の株に重点を置くべき」確固たる論拠とはなり得ないにしろ、この事実を読者に明確に示した上で、自分のスタンスを示すのが、良心とは言えまいか?彼らがこの事実に気づかぬほど馬鹿でないからには、日本企業を憂うる愛国心の故か、自分が既に日本株に投資しているので読者にも買わせたい下心の故か、その意図は定かでないが、少なくとも、損を被るのが証券会社でない事は確かである。本書の内容をかように拡大解釈するなら、なるほど、「騙されるな!」である。どうやら、資産区分ばかりでなく投資本にも、分散投資は必要らしい。