何よりも着眼点が素晴らしい。日々の地道なトレーニングと蛋白質摂取を通じて全身を隈なく鍛え上げ、そこから苛酷なダイエットに転じて筋肉の隆起と肌理を極限まで削り出したその体躯を、ビルパン一丁、裸同然の姿でステージ上に曝け出し、肉体美の覇権を競うボディビルという競技は、よく言えばストイック、悪く言えばナルシスト的であり、素人目から見れば非常に奇異な世界として映る。その神聖かつ異様な世界を包み込むひたすらな真面目さや緊迫感の中に刹那の裂け目を作り出し、世俗界との唯一の通路を切り拓くのが、大会での観客による「かけ声」の面白さであろう。その点を突破口として、ボディビルの大会とはどのようなものなのか、どのような手順で進行し、何が評価されているのかを、ごく簡単にではあるが紹介しようとする本書の切り口は、まさに炯眼としか言いようがない。タイトルを目にしただけでもう勝ったも同然という点では、ステージに上がった瞬間に(なんならすでにバックステージの段階で)勝敗がほぼ確定してしまう、実際のボディビルという競技にも似たところがあるかもしれない。文字による記述よりも写真がふんだんに使用されており、またそのほとんどが、実際の大会時の選手たちのポージングであるところもよい。鈴木雅といった現役トップビルダーから、合戸孝二や田代誠といった少し前のトップビルダー、果ては最近マスコミ等への露出も高い日体大の岡田隆先生や、YouTuberのサイヤマン、京大医学部医学科所属の学生チャンピオン、河勝雅行君など選手のレベルも幅広いのだが、上に挙げた選手たちも含むほぼすべての選手は名前も紹介されぬまま、その写真だけが載せられており、その点が少し残念に思う。あと、カットやバルクといった超基本用語だけでなく、デフィニション、セパレーション、ストリエーション、バスキュラリティ、密度といったボディビル独特の用語についても、もう少し解説があった方が親切だっただろう。
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