理念なき選挙制度を撃つ
いうまでもないことながら、国民主権の民主主義において国民の政治参加を保証する選挙制度は最も重要な制度のひとつである。それ故に選挙制度は民主主義をどのようなものと捉えるかという確たる理念の裏打ちをもたねばならないのだと著者はいう。ところが現代日本における選挙制度をめぐる議論の大半は瑣末な技術的手直し論、「金のかからない選挙論」に代表される利害得失論、甚だしい場合は現連立与党の某宗教政党による「中選挙区制復活論」などの党利党略にもとづく主張に止まり、理念にまで踏み込んで選挙制度を考え直そうという傾向は弱い。これでは理念なき折衷案(現在日本の衆議院議員選挙で採用されている「小選挙区比例代表並立制」がまさにそうだと著者は述べている)ばかりが幅を利かせ、日本の民主主義の根の浅さを増幅することとなりかねない、と著者は警告を発する。もっとも著者の立場はどちらかといえば制度の機能的有効性を重視するリアリストのそれであるように思えるのだが、もしそうだとしてもアイディアルなものの重要性も知っているリアリストだ。新書という一般読書人向け啓蒙書の体裁をとっていることもあってスラスラと読めるので、総選挙も近いといわれていることだし一読してみてはいかがであろうか。
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