静かなる傑作

原作のある映像作品が原作を超えることは滅多にない。上映時間中外界と完全に切り離され、大画面・高音質で鑑る映画でもそうなのだから、テレビドラマならなおさらだ。 しかし、この「Nのために」は完全に原作を超えていると思う。まずは島の風景の美しさ。主人公二人の原風景として言葉の要らない説得性を持っている。この点では言葉だけで世界を編んでいく小説に太刀打ちできないのは自明のこと。 「Nのために」の素晴らしさは、普通小説に軍配が上がりそうなのに、人物をより深く描けている点にある。そしてそれを十二分に感じさせてくれる役者の繊細きわまりない演技。これからも手元に置いて時々振り返っては慈しみたい。 放送が終わってからも、次のクールのドラマが終わりを迎える頃になっても「Nのために」への感想投稿がやむことがなかったのもわかる。みんなNロスにかかっていた。 けれど、役者もスタッフもこのドラマを作り上げたすべての人には、振り返らず前に進んでほしい。これからも素晴らしいドラマを見たいと思っているM(みんな)のために。