ぼくがヴァレリーに出会ったのは、十四歳のときだった。赤く長い髪が美しいヴァレリーは金持ちの娘、ぼくは労働者の息子だったけれど、ぼくたちは惹かれあい、恋に落ちた。はじめは彼女の家の庭で、やがて川沿いの道や、海辺の岬にある廃墟を散歩しながら、いっしょにさまざまなものを見、話をし、初めてのキスをした。ほどなく戦争が始まり、町が爆撃を受けるようになっても、ぼくたちの上にはいつも、太陽が輝いているような気がした。でも病弱なヴァレリーは、自分にあまり時間がないことを、知っていたのかもしれない。だからぼくに、あんなことを言ったのだ。「いつかわたしが迷子になったら、かならず見つけてね」そうするよ、とぼくは約束した。それが、けっしてしてはならない約束だとは知らずに…。イギリス児童文学の巨匠ウェストールが描く、せつなく、恐ろしく、忘れがたい初恋の物語。


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